
チラシ印刷は“オンデマンド×部数調整”で無駄を削る──小ロットから段階配布までの実務ガイド
2025年10月27日

急ぎで名刺が必要、役職や連絡先の変更が多い、店舗や担当者ごとに少しずつ内容を変えたい。こうした現場の事情に最適なのがオンデマンド印刷です。
版を作らずデータから直接出力するため、小ロットの注文や短い納期に強く、軽微な修正にも素早く対応できます。一方で、サイズや用紙(kg)、加工の可否、入稿データの作り方、料金表の見方には独自のコツがあります。
本記事は、名刺の作成をオンデマンド中心で回すために、仕様の選択からデザイン、入稿、納品までを体系化。紙媒体+Webの連携も視野に、ムダなく確実に仕上げる方法をまとめました。

オンデマンド印刷は版の作成工程がなく、受付後すぐ出力工程に入れます。急なイベントや展示会でも、当日受付締めまでの入稿で翌営業日発送に対応できるケースが多く、スケジュールの自由度が高いのが利点です。
初回は100枚、反応や組織変更を見て50枚ずつ追加など、部数のロット設計を細かく分けられます。在庫の廃棄を避けられるため、総額ではコスト最適化につながります。部数を分納にして、拠点別・担当者別に送る運用も現実的です。
部署や肩書の変更、QRのURL差し替えなど、軽微な修正はデータの再入稿だけで対応可能。多店舗の名刺を一括で作成する場合でも、氏名・電話番号・住所を可変領域にすれば、同一デザインのまま効率よく更新できます。
日本の標準サイズは91×55mm。名刺入れやカードケースとの互換性が高く、管理もしやすい定番です。海外取引が多い場合は89×51mmの欧米サイズを併用、情報量が多い場合は二つ折り(182×55mmを中央で折る等)も候補。
サイズの確定は、断裁ロスや料金表の区分、納期に直結するため最初に決めるのが安全です。
名刺の用紙は、コート系(発色が良い)、マット系(反射が少なく落ち着いた印象)、上質系(筆記性が高い)が基本。連量は180kg〜220kgが扱いやすく、200kg前後がバランスの良い標準感。
白地のホワイト度合い(青白/生成り)で印象が変わるため、見本帳で確認して選択します。厚すぎると名刺ケースに収まりにくく、薄すぎると安っぽく見えやすい点に注意。
角丸、PP貼り、エンボス、箔、スジ入れなどは機種と通紙の条件により対応可否が分かれます。トナー定着型のオンデマンド機では、広いベタ面がテカリやすい、箔との相性に条件があるなどの特性があります。
白インキ(ホワイトトナー)やクリアトナーを搭載した機であれば、色紙への白刷りや部分ニス風の表現も可能。加工の有無は価格と納期に影響するため、仕様は早めに確定しましょう。

視線は左上から右下へ流れる前提で、ロゴ→氏名→役職→連絡先→QRの順に階層を作ります。行送りは本文の文字サイズ×1.4〜1.6倍を初期値に、桁が揃う箇所(電話番号、郵便番号、メール)はタブ揃えで整列。
罫線やアイコンは0.25pt前後の細さ、濃度80〜90%のグレーに抑えると上品にまとまります。
ベースカラー1色+アクセント1色に絞ると、印象が散らばりません。白場は空白ではなく情報の一部。縁から3mmの安全領域を確保し、要素間は3〜5mmの距離を維持。
写真を使う場合は、濃色背景に白文字を重ねる時だけは可読性を最優先に下地処理を行います。
片面は情報が絞れてミニマル。両面は表で印象、裏で詳細の役割分担ができます。コストを抑えるなら片面カラー+裏面モノクロ、情報量が多いなら両面カラーを選択。運用の現実に合わせて決めましょう。

オンデマンド印刷は版代が無いぶん、100枚→200枚と枚数を増やしても単価の下がり方は緩やか。
一方で、増刷や担当者追加など小刻みな注文に強く、総額を抑えやすいのが特徴です。数千枚以上の大ロットはオフセット印刷のほうが単価有利なケースもあります。
用紙の変更、角丸やPPなどの加工、特急の納期、分納や時間指定の配送は価格に影響します。料金表は基本仕様とオプションの境界を確認し、総額で比較しましょう。
片面/両面、カラー/モノクロ、サイズ、用紙とkg、加工の有無、配送方法まで同条件で並べて比較。名刺データの再利用可否や、データ保管の期間、次回入稿時の修正対応も合わせて確認しておくと運用が安定します。

WEBの注文画面で、サイズ、部数、用紙、連量kg、片面・両面、加工、納期、分納の有無を選択。受付締め切りの時刻に注意し、逆算でスケジュールを組みます。
Illustratorの.aiまたはPDF/X‑1aで入稿が安全。塗り足しは上下左右3mm、安全領域も3mmを確保。
黒文字はK100、ベタ面の黒は入稿規定に従って指定。リンク画像は350dpi相当、フォントは埋め込みまたはアウトライン化。
入稿後の軽微な修正が想定される場合は、受付の扱いと料金の発生条件を事前に確認します。
画面確認だけでなく、実寸でプリントして可読性を確認。色が重要な案件やブランドロゴは簡易プルーフで傾向を把握すると安心です。納期は受付完了時刻でカウントされるため、校了の合意は早めに取りましょう。
初回100枚でテスト配布→肩書やQRの反応を見て50枚ずつ追加。役職・住所の変更に備え、在庫を持ちすぎない運用が安全です。
共通デザインに可変領域(氏名、店舗名、住所、電話)を設定し、CSVやフォームで収集。担当者ごとのロットを分け、地域の拠点へ分納すれば、物流のムダを減らせます。
ファンシーペーパーや色紙に白インキでロゴを刷ると、少部数でも個性が立ちます。オンデマンド機の対応有無は事前に確認し、サンプルでホワイトの被り具合やトナーの定着をチェックします。

モニターは発光、紙は反射。写真はやや明るめに現像し、暗部を少し持ち上げておく。重要な案件は簡易プルーフで傾向を確認。
安全領域を確保していないのが原因。縁から3mm内側に重要情報を収め、トンボと塗り足しを正しく設定します。
オンデマンド機では広いベタで起こりがち。濃度を落とす、テクスチャを敷く、ベタ面の面積を減らすなどのデザイン調整で回避します。
名刺からLPやSNS、予約フォームへ誘導。URLは短く、QRの周囲に余白を確保。説明欄やプロフィールと同じ表記ルールに統一すると、ブランドの印象が整います。
名刺のレイアウトや色・フォントは、封筒、カード、ショップカード、チラシのデザインへ展開可能。紙とWebを横断して統一感を出すと、接触ごとの信頼感が積み上がります。
オンデマンド印刷は、名刺の小ロット運用と抜群に相性が良い方式です。サイズとmm、用紙とkg、加工の可否を最初に決め、料金表は基本仕様+オプションで総額比較。
注文→入稿→校了→納品のフローを短く回せば、急な追加や役職変更にも柔軟に対応できます。白インキや角丸などの加工は一点豪華主義で効果的に使い、紙とWebの導線を整えて、配布後の成果まで設計しましょう。
小さく作って早く試し、反応に合わせて増刷する──それが無駄なく、確実に効く名刺作成の現実解です。