
チラシ印刷は“オンデマンド×部数調整”で無駄を削る──小ロットから段階配布までの実務ガイド
2025年10月27日

同じデザインでも、用紙が変わるだけでチラシの印象はがらりと変わります。
光沢が強いコート紙は写真が映え、マットは落ち着いた読みやすさ、上質紙は手触りと文字の安定感が魅力。とはいえ、配布方法や用途、サイズ、印刷用データの作り方によって最適解は違います。
本記事では、チラシ印刷でよく使う用紙の種類と厚み、サイズの選び方を比較しながら、初めての方でも迷わず決められる判断軸を丁寧に解説します。紙媒体とWebを横断した活用も視野に入れ、費用と納期の現実解まで押さえていきます。
短期の集客で大量配布するチラシか、長く保管されるパンフレット寄りのチラシかで、用紙の選択は変わります。
ポスティングや街頭配布のように量が多い場合は、軽いkg帯を選ぶとコストを抑えやすい一方、店頭で手に取ってじっくり読む前提なら、少し厚めで表面の質が落ち着いた紙が向いています。写真中心の訴求なら光沢、文字中心なら反射の少ない表面が読みやすくなります。
折り加工や封入があるなら、厚みは折りやすさにも直結します。
A4(210×297mm)一枚で配るのか、A5(148×210mm)で手配りするのか、B5(182×257mm)やB4(257×364mm)で目立たせるのか。サイズが大きくなるほど同じkgでもたわみを感じやすく、厚みの体感が変わる点に注意します。

表面にコート層を持ち、光沢と発色が高いのが特徴です。写真やイラストの色が鮮やかに出るため、グルメ、アパレル、家電などビジュアル重視のチラシに適しています。
表面がつるつるしている分、指紋はやや目立ちやすく、細い文字は照明の反射で読みにくく感じることがあります。表面加工を追加しなくても十分なツヤがあり、点数の多い商品カタログやポスターとの相性も良好です。
コート紙の発色と、上質紙の読みやすさのいいとこ取り。反射が少ないため、文字の可読性が高く、写真も落ち着いたトーンで再現されます。高級感を出したい不動産・教育・BtoBのチラシや、パンフレット寄りの構成に向いています。光沢が控えめなので、肌色や木目など質感を見せたい写真で実力を発揮します。
表面にコート層がないため、鉛筆やボールペンでの筆記性が高く、アンケートや申込書付きのチラシに最適です。光沢がないぶん、色はマットに沈みやすいので、写真より文字・図版中心のレイアウトに向きます。自然な手触りで、ナチュラル系のブランド表現とも好相性です。
チラシでよく使うのは、コート紙・マットコートで90kg/110kg/135kg、上質紙で70kg/90kg/110kgあたり。数字が大きいほど厚く重くなります。
同じkgでも紙種によって硬さが異なるため、体感は少し変わります。一般配布のA4なら、コート90kg〜110kgが軽すぎず重すぎない定番です。
二つ折りや巻き三つなど折り加工を入れるなら、110kg以下は折りやすく、135kg以上は筋入れ(スジ入れ)を推奨。郵送の重量制限や厚さ制限がある場合は、連量だけでなく仕上がり厚も確認します。
目安として、コート90kgで約0.08〜0.10mm、110kgで約0.10〜0.12mm、135kgで約0.12〜0.15mm程度。mm単位の差が封入のしやすさや束の厚みに効いてきます。
A4(210×297mm)は情報量と携帯性のバランスがよく、店頭配布やポスティングの標準。A5(148×210mm)は手配りで取りやすく、イベントでの回収率が上がりやすい傾向。
B4(257×364mm)は迫力が出る反面、折りや持ち帰りの手間が増えます。ターゲット層の行動に合わせたサイズ選択が、配布効率を左右します。
文字の分量が多い読み物型チラシや学習塾・セミナーの案内は、反射が少ないマットや上質紙が読みやすく、目の負担が軽くなります。ビジュアルで訴求するセールや新商品の案内は、コート紙の光沢で写真のヌケ感を出すと効果的。表面の性質が文字と写真の印象を大きく左右します。
大量ロットで単価が下がり、色の安定性に優れます。細い文字やベタ面の再現に強く、コート紙・マットコート・上質紙のいずれとも相性が良好。大部数のポスターやパンフレット併用の案件では、統一感のある色管理がしやすくなります。
小ロットや短納期に強く、バリアブル印刷にも対応しやすい方式です。最近は画質も向上していますが、ベタ面のムラや光沢の差が出る場合があるため、紙はマット系や上質紙で落ち着いた仕上がりを選ぶと安定します。試作やテスト配布に適しています。
コート紙はベタの色が締まりやすい反面、折り目でクラックが目立つことがあります。マットはベタがやや浅くなるかわりに、細い文字の読みやすさで優位。
上質紙はインクが沈み、写真はやわらかな発色になるため、コントラストの高い画像を用意するとバランスが取れます。
マットPPやグロスPPを表面に貼ると、耐久性と見た目の統一感が出ます。チラシでは必須ではありませんが、パンフレット寄りの長期配布や繰り返し使う販促物では検討の余地あり。加工を入れる場合は、折りや断裁、納期と費用への影響も合わせて確認します。
コート90kg(A4)。写真も文字も無難にまとまり、印刷コストを抑えやすい。折り込みやポスティングに使いやすい厚みです。
マットコート110kg(A4またはA5)。反射が少なく、講座案内やイベントの詳細など、文字中心のレイアウトで威力を発揮します。
マットコート135kg(A4)または上質紙110kg。パンフレットに近い扱いのチラシや、店頭で長く置いておく用途に向きます。
コート135kg(A4またはB5)。光沢で写真の色が映え、ポスターのミニ版のような使い方にも適しています。

塗り足しは上下左右3mm、安全領域も3mmを確保。解像度は写真で350dpi目安、ベクター文字はアウトライン化。
黒文字はK100、ベタ面の黒はCMYKのリッチブラック指定など、印刷会社の入稿規定に沿って準備します。細い文字は紙によって太り方が違うため、mm単位での最終調整が仕上がりの差になります。
サイズ表記(A4やA5など)と実寸mmの整合、両面の面付け方向、折り位置のガイド、写真の網点化での荒れ、表面での光沢の出方。用途に応じて、ポスターやパンフレット、ウェブ版の画像書き出しも同時に用意すると運用が楽になります。
紙種とkg、サイズ、部数の四要素で単価は大きく変わります。大量配布ならコート90kg/A4の標準仕様から見積り、店舗置きならマット110kg以上で比較。折りや表面加工の有無で納期が変わるため、公開日から逆算し、校了→印刷→発送の流れを押さえます。送料や梱包の有無も含め、総額で比較しましょう。
同じコート表記でも、メーカーやロットで光沢や白さが微妙に違います。用紙サンプルを取り寄せ、写真・文字・ベタ面が多いテストデータで小ロット出力を一度試すと、本番の失敗が減ります。
チラシから特設ページへ誘導し、予約や問い合わせ、地図をまとめて掲載。A/BテストでQRの位置やサイズを調整すると、スキャン率が改善します。紙側は文字サイズやコントラストを最適化し、屋外や店内の照明でも読みやすくします。
同じデザインでポスターやパンフレットへ展開したり、SNS用の画像を切り出したりと、二次利用を前提に設計すると、印刷費の回収力が高まります。紙面の比率とWebの比率を最初から両立させるのがコツです。
用紙の種類はコート紙・マットコート・上質紙が基本。写真中心なら光沢のあるコート、文字中心なら反射が少ないマットか上質紙。厚みはkgで選び、折りや郵送があるなら110kg以下、保管性や高級感を重視するなら135kg以上。
サイズは配布導線に合わせ、A4を中心にA5やB4も検討。印刷用データは塗り足し3mm、実寸mmとサイズ表記の整合を確認。最後は小さな試作で迷いを潰し、安心して本番へ進みましょう。