名刺デザインの依頼はこう進める──料金・納期・入稿まで完全ガイド

「名刺のデザインをプロに依頼したいけれど、相場や納期、やり取りの流れが分からない」——そんな不安を一つずつ解消するための実務ガイドです。

名刺は小さなメディア。見た目の良し悪し(デザイン)はもちろん、印刷の仕様、入稿データの精度、社内承認のスピードまでが最終の品質を左右します。

本記事では、初めてでも失敗しないように、「依頼の準備」「料金と納期の現実」「仕様(両面/片面・種類・加工)の選び方」「修正と対応のコツ」「入稿〜印刷〜納品」までを体系化。紙+Webの活用も見据えた作成プロセスを解説します。

まず把握するべき全体像

依頼〜納品の標準フロー

要件整理 → 見積・提案 → 発注 → 初稿(デザイン案) → 修正 → 校了 →  入稿 →  印刷→ 納品。

この間に、サイズ・種類(用紙・加工)・料金・納期の確定、入稿データの作成と確認が入ります。

社内の承認が遅れると納期がずれるため、最初にスケジュールを共有しておくのがコツです。

依頼前に決める三点セット

目的(名刺で何を達成したいか)/掲載情報(必須と任意の仕分け)/希望納期。

目的が「新規開拓」なら問い合わせ導線を前面に、「採用」なら人物の印象やポートフォリオへ誘導、「既存顧客向け」ならサポート情報や担当直通を優先、といった具合にデザインの方向が定まります。

料金と納期の現実(見積の読み方)

料金の内訳を理解する

多くの見積は、①制作(企画・レイアウト・タイポグラフィ) ②修正回数(例:2回まで) ③印刷仕様(部数・両面/片面・色数・用紙・加工) ④入稿データ整備 ⑤配送費 で構成されます。

色校正(簡易 or 本機)、特色、箔/エンボスなどの加工は追加費用が発生しがち。見積は「含む/含まない」を行単位で明確化してもらいましょう。

スタンダードとカスタマイズの線引き

初回はスタンダード仕様(標準サイズ・標準用紙・基本両面カラー・加工なし)を出発点に、必要箇所だけカスタマイズするとコスパが良好です。二言語や肩書違いのバリエーション、部門別の差し替えは、レイアウトを流用すれば追加費も抑えられます。

納期は逆算で管理する

希望配布日→印刷完了→入稿→校了→初稿→発注の順に逆算。加工が増えるほど工程は延びます。

繁忙期や大量部数は余裕を。予備日を1〜2営業日用意すると、軽微な差し替えや再出力にも落ち着いて対応できます。

仕様を決める(サイズ・用紙・加工・両面/片面)

サイズとレイアウト

日本の標準は91×55mm。片面は情報が少ない業態や極力ミニマルに見せたいときに、情報量が多いなら両面で表=必須/裏=補足が定石。二つ折り(182×55mmを中央折)は企画紹介やサービスラインの一覧に便利です。

縁から3mmの安全領域、塗り足し3mmは必ず確保します。

用紙の種類と連量

コート(発色・写真向き)、マット(可読性重視)、ファンシー(質感・高級感)。連量は180〜220kgが扱いやすい基準。厚すぎると名刺入れに収まりにくく、薄すぎると頼りない印象。見本帳で指先の感覚と色の出方を確認してから決定すると失敗が減ります。

加工は目的に合う最小限

角丸=親しみ、箔=高級感、エンボス=立体感、型抜き=話題性、PP=耐久性。加工は料金と納期に直結します。読みやすさ・世界観・コストの三点でバランスを取り、アクセントは一点豪華主義が現実的です。

依頼先の選び方(実績・提案・対応)

制作会社/印刷会社/フリーランスの違い

制作会社:ブランディングの提案力と進行管理が強み。印刷会社:テンプレート活用で短納期・低コストに強い。フリーランス:小回りと表現自由度。社内作成とハイブリッド運用も現実的です。

どれを選ぶにせよ、名刺以外のクリエイティブ(パンフ・Web)へ連動できるかは運用効果に直結します。

実績の見方と発注判断

自社の業界・規模・トーンに近い実績があるか。サンプルデザインに、ロゴ余白・氏名の視認性・連絡先の整理・QRの可読性といった基本品質が担保されているか。初回提案で目的に沿ったラフと根拠(なぜそのレイアウトか)が語れる相手は信頼できます。

対応品質の確認

問い合わせへのレスポンス、見積差異の説明、データ不備時のフォロー、修正依頼の進め方。トラブル時の逃げ腰感は小さなサイン。やり取りの透明性が高いパートナーほど、長期の運用で強みを発揮します。

ブリーフ(依頼書)の書き方

必要情報チェックリスト

目的/ターゲット/ブランドのトーン(キーワード3つ)/掲載情報(必須・任意)/サイズ(片面/両面)/用紙と種類の希望/加工の要否/納期と承認フロー/部数/入稿形式の希望/参考実績URLやスクリーンショット。

これを一枚にまとめるだけで、初稿の精度とスピードが向上します。

参考イメージの渡し方

「好き/苦手」を具体化し、理由を添えます(例:好き=余白が広く落ち着いた印象、苦手=細い文字が多く読みづらい)。抽象語より、文字サイズや余白mm、配色比のような定量指示が有効です。

修正依頼のコツ(往復を最小化)

優先順位を明記する

1.誤字脱字 2.可読性(文字サイズ・コントラスト) 3.ブランドトーン(色・フォント) 4.好み -の順で。指示は「氏名の字間を0.1mm広げる」「QRを2mm拡大」「肩書の改行位置を変更」のように具体化します。

回数と範囲を最初に決める

修正は2回まで/大きなレイアウト変更は別途、など合意を先に。回数無制限は納期の遅延とコスト増の原因です。微調整はまとめて依頼し、戻しのデータは履歴を残して共有すると事故が減ります。

入稿データの基礎(仕上がりを決める最後の砦)

書き出しと仕様

Illustrator(.ai)またはPDF/X-1a。フォントは埋め込み/アウトライン、画像は300〜350dpi、塗り足し3mm、安全領域3mm、黒ベタはKのみ指定。特色・箔・型抜きは専用レイヤーで明示。両面の天地や表裏の“種類”違い(カラー/モノクロ)も指示に含めます。

プリフライトと実寸確認

最終PDFはプリフライトでエラー検出。実寸プリントで読みやすさ・QRの読取・断裁位置を確認してから入稿。再入稿のルール(回数・費用・締切以内扱い)は事前に把握しましょう。

印刷と納品の運用(到着後までが仕事)

検品ポイント

断裁ズレ、色の転び、ヨレ・傷、部数不足。ロット間差は起こり得るため、初回は余裕部数で手配。問題があれば写真付きで早めに連絡すると対応がスムーズです。

予備と増刷、データ管理

役職・住所の変更が多いなら小ロットで回し、在庫を持ち過ぎない運用に。版の保管期間、増刷納期と料金の目安、最終データの保管場所を決めておくと、次回が速くなります。

ケース別の現実解(急ぎ/コスト重視/ブランド重視)

急ぎ(短納期)

スタンダード仕様+片面or両面最小情報。校了の承認者を絞り、修正は必須だけに。店頭受取や特急便がある印刷会社を選びます。

コスト重視

基本レイアウトを流用し、部門・肩書の差し替えで展開。両面カラーを片面カラー+片面モノクロへ、加工は次回に回す。部数は小ロット→反応を見て増刷が安全。

ブランド重視

ロゴ色は特色や色校正で再現。用紙は統一し、ガイドライン化。複数部署でのカスタマイズはルールを設け、バラつきを抑えます。

まとめ——依頼力が名刺の成果を決める

名刺のデザインは、見た目だけでなく目的に対する機能でもあります。良い制作パートナーを選び、明確なブリーフで提案を引き出し、具体的な修正指示で仕上げる。

仕上がったデータを正しく入稿し、仕様通りに印刷して、確実に納品・配布する。

この一連の工程を丁寧に進める依頼力こそ、最短で成果に結びつく近道です。紙+Webの導線まで含めて設計し、あなたの実績につながる一枚を育てていきましょう。